「詐欺師育成講座」としてのNHK「STOP詐欺被害！」

夕方6時のNHKのニュース番組で国民の安全を守るという大義名分のもと、「STOP詐欺被害！」というコーナーが放送されています。実際に被害があったケースを紹介して、詐欺を見極めるポイントを伝える内容ですが、詐欺師を教育する番組と考えるとたいへん親切な番組です。

「被害に遭わないために」という建前のもと、詐欺の成功事例が詳細な手口の解説と被害者の心理分析つきで紹介されているのです。

「わたしは騙されない」とアナウンサーは言います。しかしこのコーナーでわたしたちが知るのは、驚くほど簡単におもにお年寄りが騙されて、何百万円も送金してしまうという現実です。全国の詐欺師志望者はノートとペンを手に、この時間真剣に画面に向かっているに違いありません。

言ってみれば「過払い金が返還されるという内容は効果的です」「相手に考える時間を与えないようにしましょう」「キャッシュカードを受け取るにはこんな口上が有効です」「オレオレ詐欺をする際、風邪をひいて声がおかしいと言えば怪しまれない」と詐欺のイロハを懇切丁寧に教えてくれているのです。

防犯意識を高めるはずのこのコーナー、騙し方のピンポイント解説で、特殊詐欺に従事する人たちからは「NHKのおかげで詐欺のトレンドがわかって助かります」「昨日紹介された手口、早速試してみました！」といった感謝の声が寄せられているとか、いないとか。

公共放送の使命として詐欺被害を防ごうと考えたに違いないNHK。その努力が詐欺師の育成にひと役買っているとしたら、これほど皮肉なことはないでしょう。しかしそれが現実であり、NHKの実力なのです。