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米価高騰の家計負担増、実はそれほどでもない:メディアの偏った報道を考える

田んぼのイメージ

日本の食卓を支える主食である米。この米価が高騰し、連日メディアを賑わせています。しかし、本当に米価高騰は家計を直撃しているのでしょうか。実際のデータを見ると、そこには意外な現実があります。確かに米の値段は上がっていますが、家計全体から見ればその影響は限定的であり、むしろ他の消費項目の値上がりこそ、より深刻な問題となっているのです。

米価高騰の実態

米穀安定供給確保支援機構(米穀機構)の調査によると、2025年4月の1人1ヵ月当たりの米消費量は4,611gで、前年同月比▲9.4%となりました。内訳を見ると家庭内消費量は3,067gで同▲10.8%、中・外食は1,544グラムで同▲6.7%と減少しています。

また、総務省が5月30日に公表した消費者物価統計(東京都区部、速報)では、5月中旬の「米類」は前年同月比93.7%、前月比3.1%の上昇を記録しました。おにぎりも前年同月比16.9%、外食のすしは同8.3%上昇しており、米を含めた食品の値上がりが消費者物価全体を押し上げていることは確かです。

政府は対策として備蓄米を放出しましたが、その効果は限定的でした。第1~2回の放出でほぼ全量にあたる21万トンを全農など集荷業者に引き渡したものの、卸売業者に渡ったのは約7.2万トン、小売・中食・外食事業者に渡ったのは約4.2万トンにとどまっています。

参考:https://www.jacom.or.jp/kome/news/2025/06/250602-82095.php

家計への実際の影響は限定的

しかし、米価高騰の家計全体への影響は、考えられているほど大きくないのです。その理由はいくつかあります。

まず、日本人の米消費量自体が長期的に減少傾向です。総務省の家計調査によれば、1人当たりの年間米消費量は過去30年で約半分に減少しました。食の多様化により、パン、麺類、その他の穀物に消費がシフトしていることが背景にあります。

今回最も強調したいことは、家計支出に占める米の割合は実はかなり小さいという事実です。平均的な世帯における食費全体に占める米購入費の割合は5%程度。さらに、食費自体が家計支出全体の約25%程度であることを考えると、米価高騰の家計全体への影響は限定的と言えます。

例えば、5キロの米の価格が2,000円から4,000円に上昇したとします。3人家族が月に10キロを消費するとして、月々の負担増は約4,000円。これは確かに軽視できない金額ではあるでしょうが、ほかの値上がり品目と比較すると、その影響度は騒ぐほど大きなものではないのです。

もっと議論されるべきだった他の値上がり項目

メディアが米価高騰を大々的に取り上げる一方で、家計に深刻な影響を与えている他の値上がり項目については、十分な議論がなされていません。以下に、この1年で大幅に値上がりし、家計に直接的かつ重大な影響を与えている消費項目を見てみましょう。

1. 電気・ガス料金

燃料費高騰の影響で、電気・ガス料金は過去1年で平均15~20%以上上昇しています。これは米よりも家計支出に占める割合が大きく、季節を問わず毎月必ず発生する固定費です。特に冬季や夏季のピーク時には、家計を圧迫する度合いがさらに高まります。

2. 交通費

ガソリン価格の高騰や公共交通機関の運賃値上げにより、通勤・通学などの必須移動コストが増加しています。地方では自家用車が生活必需品であるため、ガソリン価格の上昇は都市部以上に深刻な問題です。

2026年にはJR東日本が平均7.1%の値上げをし、初乗り運賃も150円から160円に変わります。交通費を自分で支払っている人は毎月1,000円、2,000円、それ以上を今までよりも支出することになるでしょう。

3. 医療・介護費

高齢化社会を反映し、医療費や介護サービスの自己負担額が増加しています。これらは削減が難しい支出であり、特に高齢者世帯や介護が必要な家族を持つ世帯にとっては大きな負担となっています。

4. 日用品

洗剤、トイレットペーパー、シャンプーなどの生活必需品も軒並み10%以上の値上げが続いています。これらは毎日使用するものであり、その累積的な影響は無視できません。

5. 外食・中食

コロナ禍からの回復に伴い、外食産業は人件費や原材料費の上昇を価格に転嫁せざるを得なくなっています。ファストフード店のセットメニューや弁当なども15~20%の値上げが一般的となり、働く世帯の昼食代や、時間のない家庭の夕食代を押し上げています。

よく考えてください。現在ビッグマックとポテト、それにコーラをつけたセットの価格が750円ですよ。吉野家で牛丼並みと味噌汁で600円です。大戸屋で食事をするとなったら1食1,000円では足りません。昔はコスパがよかった外食チェーンも気がつけば値段は一丁前です。

メディア報道の偏りを考える

なぜメディアは米価高騰に過剰に反応しているのでしょうか。その背景には、日本人の食文化における米の象徴的な位置づけがあるのでしょう。しかし、よく考えれば「米は単なる食品ではなく、日本の文化的アイデンティティの一部である」というのも底の浅い神話ではありませんか?

そのうえいつの間にかメディアや世間の関心が備蓄米にスライドしてしまっています。残念ながら、小泉農水大臣は米高騰の問題をほんの少しも解決しませんでした。彼は臣民に「貧しいものは古いコメを喰え」と命令しただけです。

それをまるで何かをしたように報道して恥じないマスメディアの姿勢は強く糾弾されるべきです。

メディアは本来、視聴者・読者にとって真に重要な情報を提供する役割を担っているはずです。電気・ガス料金や交通費、医療費といった家計への影響がより大きい項目について、米価高騰の報道と同等の熱量をもってデータとともに報じていいのではないでしょうか。

消費者として冷静に判断をーブログ的結論

わたしたち消費者は、メディア報道に流されるのではなく、自分の家計における各支出の実際の割合を正確に把握し、何が本当に家計を圧迫しているのかを冷静に判断する必要があります。

米価高騰は確かに一つの経済的課題ですが、報道のしかたが過剰です。むしろ、日々の生活に欠かせない電気・ガス、交通費、医療費などの上昇にどう対応するかを考えることが、より実効性のある家計防衛策となるはずです。

米価高騰がショッキングな話題であったこと自体は否定しません。まったく解決の糸口が見えない問題なので話題になりやすいという面もあるでしょう。

しかしそれがわかったうえで敢えて言います。米が一番重要であるかどうかは疑わしいと。いかに日本のマスメディアが海外で笑われる低レベルのものであるとして、もさすがにひどいと思ったのでここに書き記しておきます。